【中山芝】
■傷みかけた芝に週日の雨が追い打ちをかける
開幕4週目でAコース4週目。
芝は夏にしか成長しないので、芝のデキの良しあし(丈夫さ)は夏にどう育ったかで99%決まる。次に、秋に開催が始まってからどれほど雨で競馬したかで、芝の傷み方がわかる。今年の中山の芝のデキはまれに見るくらいよかった。また今使っているAコースは5回開催ではじめて使われたコースであり、5回開催が始まって以来、開催が雨に当たったことがなかった。
とはいえ、JRA・HPの「馬場情報」の記述が「3~4コーナーの内側に若干の傷みが出てきましたが、全体的には良好な状態です」から「3~4コーナーの内側に傷みが見られますが、その他の箇所は良好な状態です」に変わった。さすがに3週間みっちり競馬すれば、いくら良の競馬が続いてもそれなりに芝は傷むわけだが、今年は芝がエクイターフになっているので過去の有馬記念の芝と比べればまだ傷んでいないはずだ。
これがもし今週も乾いた状態だったら、内を回っても大して遜色ない、と書くところだが、水~金曜日にかけて雨が降り続いている。JRA・HPによれば水曜日8.5ミリ、木曜日21.5ミリ、金曜日の正午まででに11.5ミリ降り、その後も降り続いている状況だ。
芝コースの土は、土というよりも山砂で、下に砕石層が入っているので、土日に晴れれば水はすっと抜けて回復するはずだが、問題は土日が晴れるかどうか。洗濯物が乾かないような天気なら水気は残るはず。
もともと今期の中山は芝を目いっぱい軟らかく管理している。最終週に入ってさすがのエクイターフもややほつれ気味だとすれば、この雨で下がかなり緩んだとしても不思議ではない。とくに芝が薄くなっている内ラチ沿いはやはり走りづらいだろう。
だが中山の3~4コーナーというのはたかだか300m程度なので、それだけ乗り切ってしまえば直線の内は悪くない。ちなみに皐月賞は春最後の芝なので有馬記念の芝よりも傷んでいることが多い。一昨年の皐月賞の日は水曜日に18ミリ、金曜日に5ミリ、土曜日に36ミリずつ雨が降り、前日の不良からの回復途上の稍重だった。つまり今回の有馬記念とほぼ同様の芝だったわけだ。そのとき芝が傷んだ内を嫌って馬群が外に展開する中、ゴールドシップが1頭だけ内を突いて勝っている。その再現は十分ありうるだろう。
4回中山は開幕週からずっと1秒前後遅い芝が続いている。先週もそうだったが、今週は週日の雨の影響が出てさらに1秒前後遅くなると考えられる。力が要る馬場で、ペースの影響も大きい。先行差し互角。やや外有利。土日に内の馬が来ていても、3日目にはガラッと外差しに変わりそうな予感だ。
【中山ダート】
■雨で凍結防止剤は流れてしまった
中山は先週の水曜日に凍結防止剤をまいた。それは話題性なので書いたけれども、凍結防止剤をまいたことで大きく物性が変わると思ってはいけない。砂はあくまでも砂。そうはいっても整髪料をつけた髪と、そうでない髪の違い程度の差はあるかもしれない。ちょっとシトっとするので、締まる感じもあるけれども、踏み抜きづらくなる分、逆に重くなるような印象もある。
だが今週は週日に雨が降っている。いくらきっちり頭を固めてもお風呂に入れば整髪料が流れてしまうのと同じように、これくらい雨が降れば凍結防止剤は全部流れてしまう。凍結防止剤が流れてしまったダートを凍らせないために、中山の馬場造園課はおそらくこの週末は夜通しハロー車を走らせるはず。
現場の作業者の皆様、寒い中ご苦労さまです。おかげで今週も競馬を楽しめます。
凍結防止剤をまいた先週は0.2秒くらい速い馬場だった。0.5秒くらい速くなるかと思ったがそこまで速くならなかった。だが今週は間違いなく速くなるはず。逃げ馬に注意。基本は先行馬有利だが、大外一気もある馬場だ。内有利。
【阪神芝】
■Bコース替わりでかなり速くなる
開幕4週目で今週からBコースになる。
阪神は4回阪神でAコースを5日使い、Bコースを4日使った。そのうちAコースを使っていた9月15日に台風の直撃を受けた。競馬終了後に土砂降りになったのは不幸中の幸いだったが、それにしても競馬最中にもかなり降っていた。実は阪神は1週目も雨の競馬だった。それで直線の芝が幅広く傷んでしまい、Bコースになってからも上がりがかかる状態が続いていた。
5回阪神になってから晴れでAコースの競馬を3週したが、4回阪神でAコースが傷んだのを引きずって、先週あたりから時計がかかりはじめていた(先週久しぶりに週日に雨が降った影響もある)。したがって今回のBコース替わりには馬場を一新する効果がある。ただし先行馬にとってもいいが、差し馬にとっても、少し外に出せばバージンの芝に届くという意味で、同様にプラスがある状況だ。要するに脚質に関係なく、速いほうの性能が生かせる状況と考えればいい。
今週は水曜日に14ミリ、木曜日に2.5ミリ雨が降った。明日(土曜日)にまたちょっと降って、日、月が晴れるという予報だ。先週も週日に雨が降って1秒弱遅くなっていた。今週も同じくらい降ったもののコース替わりの影響が大きく、タイム差なし程度の馬場に戻すのではないか。
先行馬、差し馬ともに持ち味を生かせる馬場といえる。スタミナ型よりも切れ味のある馬がなんとかしたい状況だ。内回りは逃げ馬に注意。コース替わりがあったことで3連続開催3日目の馬場の激変は中山ほど考えなくていいだろう。
【阪神ダート】
■ちょっと速めのスタンダードなダート
先週の土曜日はタイム差なし、日曜日は0.5秒くらい遅い馬場だった。これまでのところ中山ほど雨は降っていないが、土曜日にも雨が降る可能性があり、現段階ではどっちに転ぶか判定しづらい。
ただ週日の雨で中山同様に凍結防止剤が半分くらい流れてしまった可能性が高く、凍結防止剤の影響はあまり考えないでよさそう。土砂降りにはなりそうもないから、土曜日にしとしと雨が降ったとして0.5秒くらい速い馬場、それ以降晴れてタイム差なし~0.5秒くらい遅い馬場の間で推移すると予想する。ちょっと速めだがスタンダードなダートと考えてよさそう。

城崎哲
1959年栃木県生まれ。競馬雑誌編集者を経て、フリーランスのライターに。 『カリスマ装蹄師 西内荘の競馬技術』により2007年JRA賞馬事文化賞受賞。 まるで学者のように調査対象を多角的に突き詰める業界屈指の取材力を持ち、 JRA馬場造園課など独自のコネクションも数多く築いている。 他に『コースの鬼!2nd Editon』、『ハンデキャッパーの方法』など、競馬に関する著作多数。

城崎哲
JOSAKI TETSU
1959年栃木県生まれ。競馬雑誌編集者を経て、フリーランスのライターに。 『カリスマ装蹄師 西内荘の競馬技術』により2007年JRA賞馬事文化賞受賞。 まるで学者のように調査対象を多角的に突き詰め、独自の視点から競馬を追及するのが持ち味で、コース予想の分野を切り開いた。 他に『コースの鬼!2nd Editon』、『ハンデキャッパーの方法』など、競馬に関する著作多数。