高気圧に囲まれて行き場を失った台風12号は、伊豆諸島に接近した後、関東地方を掠めて東にカーブする、という非常に珍しい進路を取るという。したがって札幌・新潟には台風の影響はほとんどないハズ。小倉は台風の進路だが、雨が降り始める前に番組を終えられる可能性が強くなってきた。3場とも風は強そう。
ところでJRAのHP内の馬場情報欄がまたまたリニューアルした。芝コースの断面図が表示され、また芝コースとダートコースについて、それぞれゴール前と4コーナーの含水率が表示されるようになった。
それと関連して『馬場状態と含水率に関する基礎知識』として、馬場状態の決定方法の詳細を述べるとともに、各競馬場のコースに使用される山砂の採砂地等、これまで内部的だった情報も多く公開されている。
積極的な情報開示は馬場造園課の自信の現れだろう。ぜひチェックしてみてください。
【新潟芝】
■クッション性のいい、かつ速すぎない芝、先行差し互角、やや外有利
《Aコース1週目》
新潟が年間を通じてイタリアンライグラスのオーバーシードをしていない唯一の野芝100%のコースだということはもはや周知だと思う。
野芝100%で育てた野芝は、洋芝と共存する期間がないため地下茎の張りが強い。またとくに野芝の最盛期に行われる夏の新潟の芝はきわめて丈夫で、レースで傷んでもウィークディの間にある程度再生する。また芝コースに内・外があることもあって、新潟の芝コースはそう簡単に傷んだりしない。
今年は第1回新潟競馬終了後にBコース部分を中心として約6000㎡の芝張替え、およびエアレーションとシャタリング作業を実施した。これらの作業はほぼ昨年と同様。中間のエアレーションとシャタリング作業によって、開幕週だからといって硬すぎない(速すぎない)状態に仕上がり、時計面も毎年安定している。現在の新潟の芝が最高の状態であることを疑う余地はない。
7月の新潟は14日から雨が降っていない。その代りほぼ毎日散水している。週末も土曜は曇るかもしれないが、雨は降らないものと考える。日曜は晴れそう。土・日とも0.8秒前後速い時計を想定する。日曜は南東の風(3~4コーナーで追い風、直線は横風)がやや強そう。先行差し互角、やや外有利。
【新潟ダート】
■カラカラで時計がかかるダート。やや外有利、先行差し互角
1回新潟のダートはやや時計が速かったが、中間に全面的にクッション砂の洗浄をしたので、状態が変わるハズ。実際のところはやってみないとわからないが、新砂が足されるので時計が少しだけ遅くなると当面は考える。
ここ2週間ほど雨が降っていない。芝と違ってダートは中間に散水しないので、現在のダートはカラカラの状態。
土・日は雨が降らないものと想定する。とくに日曜は南東の風(3~4コーナーで追い風、直線は横風)がやや強そうだが、時計への影響は少なそう。0.5秒前後遅い時計を想定する。やや外有利、先行差し互角。
【小倉芝】
■開幕週でも入念に軟らかくした芝。やや先行有利。やや内有利
《Aコース1週目》
夏の小倉の芝も新潟同様に野芝100%だが、新潟と違って小倉は秋~冬にかけてオーバーシードする。だから純粋な野芝100%の芝ではない、とかつては考えていた。
だが夏の小倉の野芝100%は実は額面通りで、新潟と比べて多少芝の傷みが早いのは、内・外回りがない分だけ、と考えるのが適当なようだ。
というのは1回小倉終了後から2回小倉開始までのインターバル期間がほぼ5カ月間あり、その間に大々的な張り替えをやる。張り替えに使われる芝は野芝100%なので、大面積を張り替えてしまえば、実際に馬が走る部分はだいたい野芝に置き換わってしまうと考えられるからだ。ちなみに小倉の芝の張り替えは二年前は13000㎡、昨年は13800㎡だったが、今年は張替え面積を18300㎡に増やした。
芝の状態の良さは新潟に匹敵。また新潟同様小倉も中間に農業機械を積極的に使って芝を積極的に軟らかくしている。そのため時計が速くなりすぎず、年間を通じて時計が安定している。
また小倉も2週間以上ほとんど雨が降ってない。また小倉は台風12号の進路にあたるが、雨の降り始めが日曜の午後からで、雨が強くなる前に開催が終われそう。土・日とも雨が降らないと想定し、0.6秒前後速い時計を想定する。土・日とも北西~北北西の風(ゴール前直線で追い風)が多少強い。やや内有利、やや逃げ・先行有利。
【小倉ダート】
■乾き気味で力の要るダート。内外互角、やや先行有利
中間にダート全面のクッション砂洗浄をした。同時に新砂を足して量を調整するので、多少砂粒が大きくなり、重いダートになっている可能性がある。
小倉のダートは凍結防止剤を使用する真冬の開催があるため平均タイムが遅い。現状は2週間以上ほとんど雨が降っておらず、砂は目いっぱい乾いた状態になっているが、いくら砂が乾いても真冬の開催ほど時計は遅くならない。
土曜は晴れ、日曜は曇るが、土・日とも雨が降らないと想定し、タイム差なし前後の時計を想定する。土・日とも北西~北北西の風(ゴール前直線で追い風)が吹きそう。やや先行有利、やや外有利。
【札幌芝】
■かっちりした開幕週の洋芝。逃げ・先行有利、やや内有利
《Aコース1週目》
洋芝は軟らかい・重い、という印象があるが、それは使い込んでいくにつれて路盤が捏ねられて軟らかくなっていく(とくに雨の開催があるとそうなりやすい)ということであって、開幕週の馬場はそれなりにがっちりしていて、野芝のコースとそんなに大きく違うわけではない、と個人的には考えている。
とくに最近はシャタリング・エアレーションによって野芝のコースが軟らかくなっている一方、北海道開催は開催日数が減って洋芝がそれほど傷まないうちに終わってしまうため、両者の性格がいっそう近づいているのだ。
ここ10日くらい札幌には雨が降らなかった。週末は土曜は晴れ、日曜は曇りと考えているが、いずれにしても雨は降らないものと想定する。土・日とも南東~南南東の風(ゴール前直線で追い風)が強そう。土・日とも0.8秒前後速い時計を想定する。内有利、逃げ・先行有利。
【札幌ダート】
■多少力の要る乾き気味なダート。先行有利、内有利
昨年の開催以降、コース全面のクッション砂を洗浄しただけでなく、コース全面の"路盤補修"も行われた。
"路盤補修"とは長年使われている間に硬くなった路盤の表面部分を削り、併せてデコボコ面を平らにする作業だ。この作業によってまず多少水はけがよくなる。また路盤が多少軟らかくなり、馬の脚にも優しくなるらしい。
札幌は夏の1カ月半しか開催がなく、期間中に雨が少ない。雨が降ると一気に速くなる(そのため札幌ダートの平均時計はやや速めになっている)が、それ以外では札幌ダートの時計はかなり安定している。だが今回はクッション砂の洗浄があったので、多少時計的な傾向が変わる可能性はある。
ここ10日くらい札幌には雨が降らなかった。週末も雨がないと想定し、良で0.5秒前後速い時計を想定する。土・日とも南東~南南東の風(ゴール前直線で追い風)が強そう。先行有利、内有利。
城崎哲
1959年栃木県生まれ。競馬雑誌編集者を経て、フリーランスのライターに。 『カリスマ装蹄師 西内荘の競馬技術』により2007年JRA賞馬事文化賞受賞。 まるで学者のように調査対象を多角的に突き詰め、独自の視点から競馬を追及するのが持ち味で、コース予想の分野を切り開いた。 他に『コースの鬼!2nd Editon』、『ハンデキャッパーの方法』など、競馬に関する著作多数。
城崎哲
JOSAKI TETSU
1959年栃木県生まれ。競馬雑誌編集者を経て、フリーランスのライターに。 『カリスマ装蹄師 西内荘の競馬技術』により2007年JRA賞馬事文化賞受賞。 まるで学者のように調査対象を多角的に突き詰め、独自の視点から競馬を追及するのが持ち味で、コース予想の分野を切り開いた。 他に『コースの鬼!2nd Editon』、『ハンデキャッパーの方法』など、競馬に関する著作多数。