協力:
  • Googleログイン
  • ログイン
  • 無料会員登録
  1. トップ
  2. 無料コラム
  3. 城崎哲:馬場トレンドジャッジ
  4. 『超高速馬場』の実情

競馬コラム

城崎哲:馬場トレンドジャッジ

2019年06月01日(土)更新

『超高速馬場』の実情

停滞前線が太平洋上にできて金曜に九州南部が梅雨入りしたが、本州の梅雨入りはもう少し先。土・日とも高気圧に覆われて2場とも雨が降ることはなさそう。


【東京芝】


■乾き気味の張り詰めた速い芝、やや内有利、先行差し互角


《Cコース2週目》

先週は月曜から火曜にかけて82ミリもの大雨が降った。だが気温が高いために水はけが早く、週の後半から土・日にかけて連日散水したが、週末の芝は乾き気味だった。土・日とも乾き気味の良で、土曜は1秒前後、日曜は1.5秒前後速かった。

先週のダービーは2分22秒6のレース・レコード。だが先々週のオークスでも2分22秒8が出ていて、もうこれくらいの時計では誰も驚かない。当日はダービーを挟んだ10Rむらさき賞がコース・レコードと0.2秒差で、12R目黒記念の2分28秒2もコース・レコードだった。昨年のアーモンドアイのJCレコード以来何か競馬が変わってしまったような感じだ。

東京芝1600のレコードは1分30秒5で、3週前にノームコアがヴィクトリアマイルで塗り替えたばかり。レースを引っ張ったアエロリットが今回も逃げそう。実は東京芝1400でもヴィクトリアマイルの前日の5月11日にレコードが更新されていて、安田記念に出てくるロジクライが0.1秒差3着だった。中2週で東京マイルのレコードが再度塗り替えられる可能性も大いにある。

馬場造園課の人たちが「高速馬場」と言われるのを嫌っているのはよく知っているが、平坦な野芝の馬場をどういじっても時計の遅くなり方には限界があると思う。20年前ならダービー時期はまだ初夏だった。だが、今の5月末の東京の気温はほとんど真夏で、夏の新潟みたいな芝になっている。エアレーション等で路盤を軟らかくしていると同時に、平坦さを保った整備が行われて馬が安全に速く走りやすくなっている。むしろ速い時計は、馬場が馬の急激な性能アップをよく受け止めていると考えることもできる。

今週は水曜に申し訳程度に1.5ミリ降った。その前後には毎日散水している。時計はほぼ先週並みのハズ。土・日とも1秒前後速い時計を想定する。やや先行有利、やや内有利。


今週のG1は安田記念。1着賞金1億1000万円。

近年の安田記念が一息のメンバーになることが多かったことから、アーモンドアイ◎が出走表明した時点で独り舞台になってしまうような気がしたが、なぜか不思議なくらいメンバーが揃って、アーモンドアイの名前があまり浮いてない。実際土曜朝の時点でアーモンドアイのオッズが2倍もある。このオッズはかなり過小評価だと思う。

たぶん先週のダービーでサートゥルナーリアが負けたことが大いに影響している。もともとサートゥルナーリアにはアーモンドアイのイメージが被っていた。そのためサートゥルナーリアが負けたのに引きずられてアーモンドアイの評価が下がったのだと思う。これは明らかな主客転倒。競馬は株ではないので結局は1倍台になるだろうが。

アーモンドアイも含めて強い先行馬が多い。ヴィクトリアマイルのアエロリットはやや出負けしたことで逆にペースが速くなったが、2番枠ならもう少し楽に逃げられそう。速めの平均ラップだとして、前目の馬同士の決着になると考える。

相手はダノンプレミアム○、以下ロジクライ、アエロリット、ステルヴィオ、フィアーノロマーノ、グアンチャーレ、インディチャンプ、モズアスコット。



【東京ダート】


■カラカラだがシーズン末期の軽いダート、やや外有利、先行差し互角


先週は月曜から火曜にかけて82ミリ雨が降った。ところが金曜正午時点ですでにダートの馬場発表が良になっている。先週は気温も高かったがそれ以上に強烈に日差しが強かった。夜でも15℃近い気温なのであっという間に乾いてしまったのだろう。土曜は良でタイム差なし前後、日曜は良で0.4秒前後遅い時計だった。

今週は水曜に1.5ミリ降ったが、ほとんど影響は残ってなさそう。先週よりやや含水は少ない(つまりカラカラ)が、砂が軽めで路盤の状態もよさそうなので、そんなに遅くならないハズ。土・日とも良で0.4秒前後遅い時計を想定する。やや外有利、先行差し互角。



【阪神芝】


■年間でいちばん速い開催の乾いた速い芝、内有利、先行差し互角


《Aコース1週目》

昨年の秋競馬以来阪神のAコースは24日間使われている。他の競馬場ならボロボロになっていても不思議がない使用頻度だが、阪神の場合はボロボロにならない。阪神には真冬の開催がないのと、3・4コーナーが内回りと外回りに分かれていることの二つが大きく貢献している。

内・外回りがなかった頃の阪神は、福島と並んで芝が傷む競馬場の代表だったから、旧い競馬ファンには現在の阪神の芝の傷まなさに違和感があるハズだ。とくに宝塚記念開催の芝はボロボロだったものだが、今は、東京競馬場のダービーの芝が夏の新潟並であると同じように、すっかり真夏の芝になって、逆に1年でいちばん速くなることも多い。

ちなみに2回阪神と3回阪神の間のインターバルでのエアレーションは昨年からやられていることで、時計を抑える効果が限定的なのはすでにわかっている。

もちろん6月は梅雨の季節なので、毎週雨に当たればそれなりに傷みが進む。路盤自体はかなり軟らかくしてあるので、そうなると一気に遅くなる。その意味で6月の阪神は両極端が出現しやすい時期といえる。

今週は火曜に38.5ミリ雨が降ったが、さっさと乾いて含水もかなり少なめ。土・日とも乾き気味の良で1.2秒前後速い時計を想定する。内有利、先行差し互角。




【阪神ダート】


■標準的な含水量の標準的な速さのダート、内外互角、先行差し互角


阪神ダートは凍結防止剤を使う真冬の開催がない上に、梅雨時、秋の長雨の時期に開催があるため、含水量多めで競馬することが多い。そのため平均タイムが速め。プラス0.5秒あたりがレギュラーな時計に相当する。

今週は火曜に38.5ミリ降った。土曜は朝から良だったとしてもやや含水多めのハズ。ただし阪神のダートはあまり含水量に敏感でない特徴がある。土曜が0.5秒前後遅い時計、日曜が0.8秒前後遅い時計を想定する。内外互角、先行差し互角。



城崎哲

JOSAKI TETSU

1959年栃木県生まれ。競馬雑誌編集者を経て、フリーランスのライターに。 『カリスマ装蹄師 西内荘の競馬技術』により2007年JRA賞馬事文化賞受賞。 まるで学者のように調査対象を多角的に突き詰め、独自の視点から競馬を追及するのが持ち味で、コース予想の分野を切り開いた。 他に『コースの鬼!2nd Editon』、『ハンデキャッパーの方法』など、競馬に関する著作多数。

  • twitter
  • facebook
  • g+
  • line