秋雨前線が列島上にできている。太平洋上の熱帯低気圧が、土曜から日曜にかけて列島の南岸に近づいて東北上する。太平洋の湿った空気を抱き込んで熱帯低気圧の進行方向の雲がどんどん大きくなっているのが衛星画像で確認できる。台風と違って風は強くならないが、進行速度が遅いので雨量が多くなる可能性がある。
土曜の中山は開催が始まる頃から降り始め、午後にかけて雨が強くなっていきそう。中京は熱帯低気圧の進行方向の後ろに位置するのでほぼ晴れ。
日曜には熱帯低気圧が北上してしまうため中山は晴れ、中京は前線が南下してくるので曇りでにわか雨が降る可能性がある。
【中山芝】
■芝の状態いいが土曜にどれだけ降るかが問題、内有利、逃げ・先行有利
《Bコース1週目》
今週からJRA-HPの馬場情報の欄で、含水率と並んで「芝のクッション性」が記載されることになった。数年前までこのデータは㊙扱いだったハズだが、それはJRAの芝の馬場が世界標準(といってもどこの芝が世界標準なのかわからないが)と比べて硬めだという認識があったこと、馬場硬度の測定方式をグレッグハンマーに統一することの是非について意見がまとまってなかったからだと思う。今回数値の公表に踏み切ったのは、測定方式についての合意ができたのと、シャタリングとエアレーションを使った整備で、この先は十分軟らかい状態に維持できるという自信の現れだろう。
さて、中山は春競馬が終わるのが早く、秋競馬が始まるまでのインターバルが4カ月もある。その期間を使ってじっくり整備できるので、秋しょっぱなの芝のデキは4大場の中でも断トツにいい。
芝の張り替え面積は、前々々々年1万7000㎡、前々々年1万5000㎡、前々年1万4500㎡、前年約1万9000㎡なのに対して、今年は1万5500㎡と平均的だった。最近のJRAは景気がいいのか、押しなべて芝の張り替え面積を増やす傾向があるが、そんな中で中山の張り替え面積が増えてないのは、前述したように中山は条件がいいので、これくらいの張り替えで十分ということなのだろう。しっかり定着した野芝にシャタリング、エアレーションを入れて軟らかく絶好の状態に仕上がっているハズ。
ちなみに今開催の中山はBコースから使い始めているが、これは出走ラッシュになる有馬記念の開催でAコースを使用するためで、20年近く前からこのローテーションが採用されている。
今週の土曜は朝から雨が降りそう。芝の状態が非常にいいのでそんなに遅くはならないと思うが、集中豪雨的な雨になればその限りではない。また日曜には晴れそうだが、やはり芝の状態がいいので水はけも早いハズだ。
今週は日曜に38ミリ、月曜に8ミリ降ってその後は晴れた。土曜は雨、稍重→重→不良と変化することを想定し、1.5秒前後遅い時計を想定する。日曜は晴れ、稍重→良を想定し、0.6秒前後速い時計を想定する。内有利、逃げ・先行有利。
【中山ダート】
■含水多めで速いダート、内外互角、やや逃げ・先行有利
昔は砂を足すときは結構大きめの粒を入れたので、秋しょっぱなのダートは多少遅くなっていたような気がするが、最近は粒度に気を使って細かめの砂を入れているようで秋しょっぱなでも、あるいは乾燥した状態でもそんなに時計が遅くなることがない。今週は土曜に雨が降ると予想されることもあって速くなる可能性が高い。
今週は日曜に38ミリ、月曜に8ミリ降り、その後は晴れた。土曜は雨、重→不良を想定し、2秒前後速い時計を想定する。日曜は稍重を想定し、1秒前後速い時計を想定する。内外互角、やや逃げ・先行有利。
【中京芝】
■野芝100%で状態いいがやや含水多めの芝、やや内有利、やや逃げ・先行有利
《Aコース1週目》
例年なら秋の今ごろは阪神開催になるところだが、今年は阪神ではなく、中京開催になった。例年なら7月にある3回中京と9月の阪神開催が入れ替わったことで、中京は中山並みに長い夏のインターバルを手に入れた。中京は冬の開催が多く、芝がもっとも傷みやすい競馬場だったが、この変更でかなり改善が見込める。
昨年の中京は、3月の開催から7月の開催が始まるまでの間に9000㎡、7月の開催が終わってから今開催が始まるまでの間にさらに1万4000㎡張り替えたが、それに対して今年は3月の開催から今までの間に2万3000㎡張り替えた。合計した張り替え面積は昨年と同じだが、内容的には今年のほうが断然いいハズだ。しかも今開催は野芝100%で行うことができる。
今週は月曜に39.5ミリ、水曜に9.5ミリ、木曜に23.5ミリ、金曜に13ミリ程度降った。土曜の朝にも多少降ったようだ。この先は晴れると想定する。土曜は晴れ、稍重→含水多めの良で、0.5秒前後速い時計を想定する。日曜は曇り、標準的含水の良で、1秒前後速い時計を想定する。やや内有利、やや逃げ・先行有利。
【中京ダート】
■含水多めで速いダート、内有利、逃げ・先行有利
今週は月曜に39.5ミリ降り、水曜に9.5ミリ、木曜に23.5ミリ、金曜に13ミリ程度降った。土曜の朝にも多少降ったようだ。この先は晴れると想定する。土曜は晴れ、重→稍重を想定し、1秒前後速い時計を想定する。日曜は曇り、稍重→良という推移を想定し、0.5秒前後速い時計を想定する。内有利、逃げ・先行有利。
城崎哲
JOSAKI TETSU
1959年栃木県生まれ。競馬雑誌編集者を経て、フリーランスのライターに。 『カリスマ装蹄師 西内荘の競馬技術』により2007年JRA賞馬事文化賞受賞。 まるで学者のように調査対象を多角的に突き詰め、独自の視点から競馬を追及するのが持ち味で、コース予想の分野を切り開いた。 他に『コースの鬼!2nd Editon』、『ハンデキャッパーの方法』など、競馬に関する著作多数。