【東京芝】
■内に目に見えないグリーンベルトがある。先行有利、内有利。
今週からCコース。
例年そうだが、東京のCコースはダービーで使うことを念頭に置いて温存されてきたコースで、昨年秋にほんの2週間(4日間)使われただけ。しかも昨年から今年の新春にかけての競馬で、A、B、Dコースはそれぞれ大雨に降られたり、雪かき作業で踏み荒らされたりしてきたが、Cコースの開催時はまるで雨が降っていない。
先週まで使われていたBコースは昨年3週間(6日間)使われて、最初の週の土曜日に大雨が降った。その後洋芝が伸びて昨年の傷みは見かけ上消えていたが、傷みだすと早く、2週目には早くも内の芝がやや禿げ気味だった。それでも日曜10RのフリーウェイSで最内を通った先行馬がまとまって1~3着を独占したように、あるいは、オークスで“怪物”ハーブスターが前の馬をクビ差とらえられなかったように、Bコースでさえ十分に前残り可能な芝の状態だった。
それが今週からほぼ無傷のCコースに替わる。しかも最内から3m外側は、冬競馬で12日間使い倒されたDコース。…というわけで、ダービーの芝は最内に目に見えないグリーンベルトがあると考えて間違いない。
ただしそれをあてにして最内に馬群が殺到する可能性は大きい。先行馬が力で押し切るのを期待するならともかく、直線で内の差し馬の前が開くと考えるとムシがよすぎるかもしれない。
今週も週日には月曜日と火曜日合わせて24ミリ雨が降った。28、29日に散水もしている。温度が上がっているので路盤に水が余るほどはないが、乾ききってもない。芝の瑞々しさが保たれる程度で、ふっくらしたいい感じの芝になるだろう。
先週のBコースは土曜日が0.6秒前後速く、日曜日が0.2秒前後速い芝だった。今週の芝は含水率、軟らかさなどの点では先週までと同じだが、芝そのものの状態が格段によくなることから、昨年秋以降もっとも速くなり、1秒程度速くなる可能性がある。前述したような理由で基本的には先行有利、内有利。前目で馬群を捌ける馬が穴になる可能性が大きい。
【東京ダート】
■乾いてもある程度速め。やや先行有利、内外互角。
芝とは逆にダートは年度末が近付くにつれて速くなる傾向がある。夏に補充した砂が流れて全体薄目になるため、寄せて集めて砂厚は同じにしていても、よりふっくら掻き起す感じになってくる。また芝と違って年間を通じてコース替わりがないダートでは同じ砂を使い続けることにより、年度末になるほど砂粒が細かくなる。それらの相乗効果により春のダートのほうが多少速くなる。
現在の東京ダートにも多少その傾向が見られる。先々週はカラカラに近いダートだったはずなのに0.2~0.5秒程度速かった。先週は週日の雨で含水したため、1~1.4秒速いダートになった。今週はそれよりは遅いものの、ある程度軽めのダートで、0.5~1秒速くなると予想する。やや先行有利、内外互角。
【京都芝】
■オーラス週でやや差し有利。されどやや内有利。
Dコース3週目。今期京都の最終週。
京都は在来型の芝だが、温度が上がって芝も元気になってきている。Dコース2週目の先週も土日ともかなり内有利だった。なんといっても現在使われているDコースは、昨年夏以来初めて使われたコースなので、コーナー部分の内がいいということだろう。同じことは今週も引き続き言える。
ただし脚質的にはある程度差し馬場になりつつある。先週の日曜日は逃げ馬が2勝2着1回したが、そのうち2勝はスローペースでもたらされたものだった。つまりコーナーは内がいいが、直線は外のほうがよくなりつつある、ということである。
京都の今週の降水量は月曜日に16ミリ降っただけで、水、木曜日に散水している。芝は若干傷んできているが、先週より降水量が少ないので、時計的にはむしろ速くなる可能性もある。先週は土曜日がタイム差なし、日曜日が0.5秒速い芝だった。今週は乾いて先週より多少速くなり、1秒前後速い芝になると予想する。やや差し有利。やや内有利。
【京都ダート】
■軽めのダートで先行差し互角。内外互角。
京都は夏前の最後の開催で、使い込まれてやや砂が細かくなり、ダートが軽く、速くなっている可能性がある。
先週のダートは含水があってさらに速くなり、土、日とも0.3秒前後速い馬場だった。今週は先週よりも多少乾くが、そんなに遅くはならず、タイム差なし前後の時計になると予想する。先行差し互角。内外互角。

城崎哲
1959年栃木県生まれ。競馬雑誌編集者を経て、フリーランスのライターに。 『カリスマ装蹄師 西内荘の競馬技術』により2007年JRA賞馬事文化賞受賞。 まるで学者のように調査対象を多角的に突き詰め、独自の視点から競馬を追及するのが持ち味で、コース予想の分野を切り開いた。 他に『コースの鬼!2nd Editon』、『ハンデキャッパーの方法』など、競馬に関する著作多数。

城崎哲
JOSAKI TETSU
1959年栃木県生まれ。競馬雑誌編集者を経て、フリーランスのライターに。 『カリスマ装蹄師 西内荘の競馬技術』により2007年JRA賞馬事文化賞受賞。 まるで学者のように調査対象を多角的に突き詰め、独自の視点から競馬を追及するのが持ち味で、コース予想の分野を切り開いた。 他に『コースの鬼!2nd Editon』、『ハンデキャッパーの方法』など、競馬に関する著作多数。