【東京芝】
■土曜と日曜の芝の速さにギャップができそう!
Bコースの2週目。秋の開催の通算5週目。1週目が3日間連続開催だったので、開催日数でいうと10~11日目になる。
何回か書いているが、この時期の芝はどの場であってもオーバーシードで、洋芝と野芝の二層構造になっている。そのうち洋芝は今どきの気候が最適な芝なので鮮やかな緑色をしているが、野芝は半分くらい紅葉して葉茎の部分が白っぽくなっている。洋芝は立つ芝であり、野芝は匍匐する芝なので、カメラ等に映っているのはすべて上を覆った洋芝である。ところが洋芝は9月半ばに種をまいて発芽してからまだ1カ月半程度しかたっていないので、春の洋芝のようにがっちり根付いていない。そのため馬が上を走ると簡単に引き千切られてしまう。前述したように今の時期以降の野芝は白っぽい色なので、洋芝が薄くなって野芝がむき出しになると、テレビモニターなどで見るとその部分には芝がないように見える。だがこれは洋芝がなくなっているだけで、野芝はほとんど無傷に近い状態で残っていることが多い。たとえ洋芝がなくなっても、野芝の根が残っている状態なら、馬の走りやすさや速さにはほとんど影響しない。
先週は開催日の土曜日の競馬開催中に合計7ミリほど、夜にも多少降って合計10ミリ雨が降った。土曜日の12レース目には全体が内を避ける競馬が見られた。東京はスタンド前直線入り口がいちばん低いので、雨が降ると坂下に水分が集まる傾向があり、先週の土曜日の最終戦のように4コーナーから直線にかけて内を避ける傾向が見られる。だが水気が多いせいでその部分が多少じめっとするだけで、芝はそれほど傷んでいないことが多い。晴れた翌日の日曜日になると馬が内に戻っていた。雨が降った土曜日でも時計はそれほど遅くなっていない。先週は土曜日がほぼタイム差なしで、日曜日が0.2秒遅い程度の時計になった。
先週の土曜日に10ミリ、日曜日に0.5ミリ降ったが、今週は雨が降っておらず、やや乾き気味の路盤になっている。だが今週も週末の天気が怪しい。どうも3場の中では東京がもっとも降りそうだ。そこで今週とくに注意すべきことは、土曜の芝と日曜の芝の速さにギャップができそうなこと。土曜日は開催中は曇りで夜に雨が降る見込み。日曜日も多少降りそうだ。となると土曜日の芝は乾き気味で0.3~0.5秒前後速いと予想されるが、土曜の夜に降って日曜も降り続けば日曜の芝はかなり軟らかくなりそうで、1秒以上遅くなる可能性もある。
土曜日のうちは乾き気味の速い芝でやや先行有利、内有利だが、日曜日になると力が要る、ちょうど差しごろの芝になるはずで、やや差し有利、やや外有利になる。
【東京ダート】
■小雨降ってやや速いダート。先行差し互角、土曜日は内外互角、日曜日はやや外有利
先週の東京ダートは土曜日の1、2レース目まで良で、昼前から降り始めて4レースから稍重に。日曜日はずっと稍重だった。土曜日は0.1秒程度速かった。日曜日はじわっと全体濡れたようでさらに速くなり、1秒前後速かった。
今週は週日に雨が全く降ってない。土曜日の夜から降ると考えられるので、土曜は乾いて時計のかかるダートだが、日曜日には打って変わって速くなるはず。土曜日は0.4秒程度速いダートで、日曜は1秒ほど速いダートになるのではないか。土曜日は内外互角、日曜日はやや外有利、土日とも先行差し互角。
【京都芝】
■芝の状態上々で人気馬が強い。内有利、やや先行有利
今週からBコース。(先週のこの欄で、京都の柵移動はもっと先のように書いていたが、Cコースへの移動と勘違いしていたようだ。スイマセン)
京都は3・4コーナーに内・外回りがあるのと、馬群がバラけやすいコーナー形状から、東京に比べると秋の芝が傷みづらい(芝の傷み出しが遅い)。しかも今年秋の京都は天候的なめぐりあわせがよく、これまでほとんど雨の中で競馬していないため、芝自体がさほど傷んでいない。その上今週からBコースになる。京都の柵の移動幅はJRA全競馬場の中でもっとも大きく、Bコースになると柵が直線で4m、直線で3m外側に移動する。それだけ外に移動すると、内の傷んだところがほぼカバーされる。このコース移動で芝はほぼ新品同様になったと考えていい。
先週は土曜日の午前中に7ミリ雨が降った。だが内訳は、芝は午前中の1レース(第2レース)のみ雨中で競馬しただけで、その後は雨が止んだ。4回京都開幕1日目は1.5秒前後速い芝だったが、先々週は0.6秒前後速い芝で、先週は0.2秒前後速い芝だった。順当に時計はかかるようになっているし、直線では馬群も広がりつつあるが、まだ追い比べで外の方が目立って強いような状況にはなっていなかった。さらに今週からコース替わりしたことでコーナー部分の内の芝がよくなることは大きい。
この週末は多少ぐずつく可能性はあるが、土曜日は1日中曇りで、日曜日の午後、開催が終わる頃に雨が降りだすものと考える。そうなるとやや乾き気味の路盤で、先週より時計は速くなりそう。雨が降り出すまでは0.7秒程度速い芝になると予想する。降っても大した雨量ではなさそうなので、降り始めて遅くなっても0.2秒速い程度か。また今週はコース替わりで先行馬と内の馬がさらに有利になる。
【京都ダート】
■力の要る時計がかかるダート、逃げ・先行有利、内有利。
先週は土日ともほぼ0.2秒前後速かった。先々週まで乾いたダートなのにけっこう速かったが、先週は土曜の午前中に小雨が降ったにもかかわらず逆に時計が遅くなった。おそらく砂厚調整の際に砂を相当量足したものと思われる。
砂厚は、髪にドライヤーをかけて髪型をふんわりさせるのと同じように、砂を掻き起した状態で測るものなので、砂がみっちり詰まったような掻き起し方でも、スカスカの掻き起し方でも、同じ砂厚にすることはできる。先々週までの京都が後者なら、先週の京都は前者のようである。
この週末は多少ぐずつく可能性はあるが、土曜日は1日中曇りで、日曜日の午後、開催が終わる頃に雨が降りだすものと考える。そうなると日曜日に雨が降りだすまで砂はやや乾き気味で、先週より時計が遅くなるはず。0.2秒くらい遅くなりそうだ。時計がかかる馬場で前崩れが期待できるかというと、むしろ全体失速し、さらに前が有利になる可能性がある。逃げ・先行有利、内有利。
【福島芝】
■コース替わりで芝の状態上々。先行有利。土曜は内外互角、日曜日はやや外有利
今週からCコース。
10年近く前まで秋の福島は3歳未勝利戦の最後の受け皿として多くの開催数をこなしていたので、毎年秋の開催の後半には芝が禿げてほとんどなくなっているような状態になっているのが普通だった。そういうイメージはなかなか消えないモノで、今でも秋の福島の芝といえば悪くて当たり前のような気がするが、そろそろその先入観は捨て去ったほうがいい。だいたい震災を経て福島の芝コースは馬が走る部分に関してはほぼ全面的にエクイターフになっている上、これだけ開催数が減ってしまうと物理的にそう簡単には芝は悪くならない。昨年の秋の福島なんて最後まで芝がほとんど悪くならなかった。
ところが今年から、昨年まで中央でやっていた障害戦の大半がローカルに移されることになった。1週約3レース障害が行われることになるので、影響はかなり大きいはず、と思っていたのだが、これまで3週、いずれも良で競馬できたことが大きく、芝の傷みはまだ表面化していない。映像で見ても内がそれほど悪くなっていないし、時計的に見ても、3週目になってもそんなに芝は遅くなっていなかった。
2週Aコース、1週Bコースを使って、今週からCコース、福島のコース移動は2m刻みなので、福島でAコースからCコースに移るのが中央4場ならAコースからBコースに移るのと同等である。コースローテーションには手間も人件費もかかるので、1週だけでローテーションするのはずいぶん贅沢だが、だとしても芝の傷みを蓄積しないためには小刻みなローテーションが有効なことはたしか。
先週の福島は土曜日に1.5ミリ、日曜日に1ミリ雨が降ったが、土曜日の雨は午前中のレース中に降り、日曜日の雨は番組終了後に降ったもの。土曜日の降水量自体ほんの少しだが、競馬最中の雨の影響はそれなりにあるものだし、土曜日に馬場が緩んだ状態で競馬すればその分芝が傷むので、日曜日の時計も遅くなる。先週の時計は土日とも0.4秒前後速い程度だった。
今週の福島は土曜日は晴れ、日曜日には降る可能性はあるが、ここでは降っても競馬終了後と考えることにする。先週も書いたように福島はコーナー、直線ともバラけ気味に走る競馬場なので、コース移動自体の効果は過大評価できないが、もともとの芝の状態がいいため、少なくとも先週並の時計は期待できる。先週と違って土曜日に雨が降らないと考えられるので、土日とも0.6秒前後速いと予想する。土日とも先行有利。土曜日は内外互角、日曜日はやや外有利。
【福島ダート】
■乾いた力の要るダート。先行有利、やや外有利
福島は先々々週の土曜日に1ミリ、日曜日に0.5ミリ、先々週の土曜日に1.5ミリ、日曜日に1ミリ降った。要するに丸丸2週間ほとんど降ってないも同然ということである。先週の土曜日は午前中の雨で0.5秒前後速かった。日曜日の雨は競馬終了後なので、競馬中の砂は乾いていたはずで、0.1秒前後速い状態だった。先週の日曜日のダートが秋の福島ではもっとも遅かった。
今週の福島は土曜日は晴れ、日曜日には降る可能性はあるが、ここでは降っても競馬終了後と考えることにする。砂は乾いているはずで、先週の日曜日よりも遅くなっても不思議ではない。タイム差なし前後になると予想する。先行有利、やや外有利。

城崎哲
1959年栃木県生まれ。競馬雑誌編集者を経て、フリーランスのライターに。 『カリスマ装蹄師 西内荘の競馬技術』により2007年JRA賞馬事文化賞受賞。 まるで学者のように調査対象を多角的に突き詰め、独自の視点から競馬を追及するのが持ち味で、コース予想の分野を切り開いた。 他に『コースの鬼!2nd Editon』、『ハンデキャッパーの方法』など、競馬に関する著作多数。

城崎哲
JOSAKI TETSU
1959年栃木県生まれ。競馬雑誌編集者を経て、フリーランスのライターに。 『カリスマ装蹄師 西内荘の競馬技術』により2007年JRA賞馬事文化賞受賞。 まるで学者のように調査対象を多角的に突き詰め、独自の視点から競馬を追及するのが持ち味で、コース予想の分野を切り開いた。 他に『コースの鬼!2nd Editon』、『ハンデキャッパーの方法』など、競馬に関する著作多数。