【中山芝】
■昨年の11月と同程度の速さで、やや先行有利。やや内有利
秋中山の2週目。馬場改修後2週目のAコース。
今年9月の中山開催がなかったのは、スタンド改修と同時に芝コースの馬場改修が行われていたからだが、競馬ファンにとって重要なのは芝馬場の改修のほうだ。実はJRAの他の芝コースが次々に路盤改修され排水性改善していく中、最後に残ったのが中山だった。その結果ここ数年はJRAの8つの野芝の芝コースの中で、中山の芝コースの排水性だけが悪い、という状況だったのだ。
今回の芝コースの改修ではコースの内側部分を中心に土を剥がして、単粒の砕石層を入れた。その上に従来と同じく30㎝の山砂層、さらに20㎝のバーク入り山砂層を載せた。要するに路盤の上の50㎝は従来と同じだが、その下に単粒砕石層が追加された。この工事は植木鉢の下に粗めの土や石を入れるのと同じことで、それによって排水性がよくなるわけだ。中山の芝コースが今後、重・不良になりづらくなる、重・不良からの回復が速くなる、重・不良時の馬場が傷みづらくなる…等は間違いない。ただし上の50㎝の路盤構造は従来通りで、コースの線形形状、立体形状等も従来と同じである。(詳しい工事内容等については『競馬王』最新号の『コースの鬼!』や、JRA・HPの『馬場情報』欄の記述を参照してほしい)。
中山に限らず路盤工事があった直後は、路盤を掘り返すことによって路盤が軟らかくなる。その昔は路盤を軟らかくする目的で路盤改修工事をやっていた。十数年昔まではバーチドレン等の機械がなかったため、路盤を軟らかく保つ手段が数年に1回の路盤改修工事しかなかったからである。今はいろいろな機械があるので、路盤を軟らかくすることのみを目的として路盤工事をすることはなくなったが、路盤工事によって副次的に路盤が軟らかくなることは間違いないのである。
問題はどれくらい軟らかくなっているかだが、先週の競馬を見ると、秋しょっぱなの開幕週で土曜日が0.2秒前後速く、日曜日はタイム差なしだった。これは昨年のしょっぱな開催(9月開催)の後半~11月開催の前半がこれくらいだった。昨年の中山はシャタリング、バーチドレンを使った軟らかい馬場管理に取り組んだ元年なので、それ以前と比べるとかなり時計も遅くなっていた。たとえば一昨年の中山9月の開幕週の芝と比べると約2秒遅くなっていた。現在の芝の速さはちょうどそのくらいだ。当然これから暮れ、正月にかけて時計はさらに遅くなっていくから、中山の芝の「中速化」は着実に進行しているといえそうだ。
とはいえレース映像から見た感じでは路盤はしっかり安定している様子で、芝が緩んでいる感じは全然ない。先週の2日間の競馬で芝が傷んだ感じもほとんどない。先週は騎手もいろいろ様子を見ていたようで、最初は比較的外を回っていたが、レースを重ねるにつれて内の取り合いになっていた。これなら早めに外差しになってしまう心配は当面しなくてよさそうだ。
また今週は芝刈りしていないが、かなり気温が下がってきているので1週間程度芝刈りをパスしても芝丈はほとんど伸びない。だから芝刈りしてないから馬場が重くなっているのでは、みたいな心配も無用だ。
今週も晴れで競馬できそうだ。木曜日の午前中に5.5ミリ雨が降り金曜日正午の馬場発表の時点で「稍重」だが、排水性改善工事をしたばかりだし、金曜日は午後から晴れたので、土曜日のアサイチから良で競馬できると思う。時計はほぼ先週なみ。以前ほど速くはないとはいえ、昨年の11月と同程度の速さなので、先行失速を警戒しすぎる必要はない。やや先行有利。やや内有利。
【中山ダート】
■軽めのダートで速い上りが出やすく先行差し互角、内外互角
先週は月曜日に13.5ミリ、木曜日に4ミリ、金曜日の朝に1ミリ降って金曜日の馬場発表が「重」。土曜日は晴れたが1日中稍重のままだった。日曜日は朝から良に回復したが、土曜日が0.7秒前後速く、日曜日は0.8秒前後速い時計だった。途中で馬場発表は変わったものの土日を通じてだいたい同じ程度の速さだった。
それに対して今週は木曜日に5.5ミリ降って、金曜日の馬場発表が「重」と、ほぼ先週と同じ経緯をたどっているが、先週よりも空気が乾燥している感じなので、土曜日の午後に良になり、時計は0.5秒前後速くなりそう。日曜日はもう少し乾燥して0.3秒前後速くなるはず。軽めのダートで速い上りが出やすく先行差し互角、やや外有利。
【阪神芝】
■芝の状態上々、切れ味生きてやや差し有利、内有利。
秋阪神2開催目の2週めのAコース。
前開催の阪神は中間に台風の大雨が降ったことはあったが、開催自体は一度も雨に当たっていない。また東京・京都のような3日間開催もなかった。そのため芝の傷みが最小限で済んだ。またAコースはまだ気温がそれほど下がっていない9月21日の時点までしか使われていないので、それ以降の芝の回復も望める。
前開催の阪神の芝は1~1.5秒くらい速く、最後まで速いままだった。それに対して先週(5回阪神開幕週)は木曜日に7.5ミリ雨が降り、週末はしょっぱなから良。新馬戦の数が多いのと、日曜日はほとんどのレースがスローペースだったためいまいち時計がつかめないが、いちおう土曜日は良ながら含水が残って0.5秒遅く、日曜日がタイム差なしだったとしておく。
この中間は木曜日に4ミリ降り、金曜日正午の時点で「良」。週末は雨の心配がなさそうだし、先週と比べると空気も乾燥しているので芝が乾きやすいはず。芝の状態自体は4回開催と見劣らないはずなので、今週は多少時計を戻して、土日とも1秒弱前後速くなると見込む。キレ味が活きる馬場でやや差し有利、内有利。
【阪神ダート】
■土日とも標準的なダートで、先行有利、やや外有利。
先週は日曜日に5.5ミリ、月曜日に11.5ミリ、木曜日の昼過ぎまでに7.5ミリ降った結果、金曜日正午時点での馬場発表は「重」で、土日とも晴れたが、土曜日に稍重スタートし、結局日曜日の最後まで稍重のままだった。時計的にも土曜日も日曜日も0.5秒前後速く、あまり変わらなかった。
今週は木曜日に4ミリ降った。金曜日正午の馬場発表は「稍重」だが、先週よりは早めに乾くはずで、少なくとも土曜日の午後には良になるはず。土曜日のダートは0.3秒前後速くなりそう。日曜日のダートは多少時計がかかってタイム差なし前後になると考える。先行有利、やや外有利。
【中京芝】
■芝の状態上々も頭数多めで中~外枠有利。差し有利。
秋しょっぱな開催のAコース2週目。
先週の土曜日は1日中曇りで気温が上がらず、一瞬だがはらはら雪が降った(降水量はゼロ)。名古屋は寒いところなのだと改めて知った。ただし馬場発表は良で、時計は0.8秒前後速かった。日曜日はよく晴れて0.5秒前後速かった。
今週は木曜日に2.5ミリ降ったが金曜日正午の馬場発表は「良」。中間の雨量も問題にならないほどだし、先週の競馬による芝の傷みもほとんどなさそうだし、土日も晴れで競馬できそう。であれば今週の芝も先週並の速さになり、0.5~0.6秒前後速くなるはず。中京の芝コースは芝1600を除き出走可能頭数が18頭と多く、フルゲートになることも多いせいか、差しが決まりやすい。内は芝がよくても窮屈になりやすく中~外枠が有利。差し有利。
【中京ダート】
■先行差し互角、内外互角
先週は降水量自体は少なかったが、気温が上がらない上に、湿度も高く、土曜日は雪も降った。降水量はゼロだがけっこう降っているように見えた。その土曜日は良発表だったが時計は0.2秒前後速く、実質的には稍重に近かったと思う。日曜日は晴れ、ダートが少し乾いて0.2秒遅かった。
今週は木曜日に2.5ミリ降り、金曜日正午の発表は「稍重」だが、先週と違って金曜日から晴れが続きそう。したがって今週の良は掛け値なしで、土日とも多少時計がかかって先週の日曜日並みか、それ以上に遅くなる可能性がある。0.2~0.5秒前後遅くなると考える。先行差し互角、内外互角。

城崎哲
1959年栃木県生まれ。競馬雑誌編集者を経て、フリーランスのライターに。 『カリスマ装蹄師 西内荘の競馬技術』により2007年JRA賞馬事文化賞受賞。 まるで学者のように調査対象を多角的に突き詰め、独自の視点から競馬を追及するのが持ち味で、コース予想の分野を切り開いた。 他に『コースの鬼!2nd Editon』、『ハンデキャッパーの方法』など、競馬に関する著作多数。

城崎哲
JOSAKI TETSU
1959年栃木県生まれ。競馬雑誌編集者を経て、フリーランスのライターに。 『カリスマ装蹄師 西内荘の競馬技術』により2007年JRA賞馬事文化賞受賞。 まるで学者のように調査対象を多角的に突き詰め、独自の視点から競馬を追及するのが持ち味で、コース予想の分野を切り開いた。 他に『コースの鬼!2nd Editon』、『ハンデキャッパーの方法』など、競馬に関する著作多数。