【中山芝】
■絶好芝だが軟らかく力がいる
開幕週でAコース1週目。
中山は4回中山の前5日Bコース、後4日Cコースを使い、5回中山でAコースに戻す独特の使い方をする。通常このような使い方をするとインにグリーンベルトが生じる。中山のコース移動幅は3m刻みなので、インの3mが5回中山で初めて開放する部分である。
11月20日に実際の中山の芝を見に行ったが、Bコース、Cコースの芝の状態がよすぎて、今回のコース戻しではグリーンベルトはできないと思う。実際に見た感じでもそう思うが、4回中山では15日日曜日に59ミリ降ったが、昼前に止んでダメ―ジが最小限に済んだ。それ以降は雨に当たっていないこともある。もし直線でこの無傷のインを狙ってインに馬が殺到するようだと、内が詰まって逆に外のほうがよくなる可能性もある。中山は馬群がバラやすいところだし、あまり極端なことにはならないと思うが。
今週は月曜日に11ミリ降っているが、さらに26日(火)~29日(金)には芝への散水もしている。これは船橋は11月前半の降水量が少なかったため、主に洋芝への水やりが必要だったからだろう。さらに4回開催終了後の短いインターバルの間にバーチドレンを入れている。しかもJRA・GPの「馬場情報」欄を見ると、直前の芝刈りをやってない。11月20日以降芝刈ってないとすれば、洋芝は記載値以上に伸びている感じだろう。要するに、これでもかこれでもか、というくらい今回の開幕週は芝を軟らかく、重くする条件を揃えているわけである。
だが芝の状態そのものはものすごくいい。開幕週だということもあるが、それ以上に今秋の中山の芝はもともとのデキがすばらしくいいのである。
それでどっちに転ぶのか、ということだが、先週の「馬場の真実」コラムでも書いたが、芝の状態がいいので速い上りは出る一方、芝が軟らかくなったことで道中のスタミナの消耗度が高くなり、同じペースならやや前の馬が垂れやすくなる(レースの上がりが遅くなる)と思う。したがって基本的には先行有利、内有利ながら、2番手の好位グループの馬のちょい差しがいちばんの狙い目になる。時計的には4回中山開幕週のよりも少し速めで1~1.5秒速い馬場と予想する。
【中山ダート】
■乾いたダートでパワー型の先行馬が有利
11月の中山は今週の月曜日に10.5ミリ降っただけで、それ以外はほとんど雨が降っていない。ダートは間違いなく乾いている。パワータイプが有利の馬場になる。
前開催の東京および京都のダートが渋り気味で時計が速めだったので、東京および京都で不振だった先行馬からピックアップするのがお奨めだ。タイム差なしの馬場と予想する。逃げ・先行有利。内枠有利。
【阪神芝】
■内外の状態に差はない 差し馬が台頭可能
開幕週でAコース1週目なのは中山と同じでも、こっちは2回目のAコースになる。
阪神は4回阪神でAコースを5日使い、Bコースを4日使った。そのうちAコースを使っていた9月15日に台風の直撃を受けている。競馬終了後に土砂降りになったのは不幸中の幸いだったが、それにしても競馬最中にもかなり降っていた。実は阪神は1週目も雨の競馬だった。それで直線の芝が幅広く傷んでしまい、Bコースになってからも上がりがかかる状態が続いていた。
したがって今回の阪神のAコース戻しによって内がよくなることはない(グリーンベルトはできない)。直線は内外差がないか、むしろやや外のほうがいいような状態。直前週に芝刈りもしてなさそうだし、差し馬が有利になる可能性もある。
今週は月曜日に24ミリ降り、それ以降は降ってない状態。路盤はやや乾きめで、全体時計はやや速くなるかもしれないが、やや上がりがかかり差し馬が台頭可能。同じように乾いていた4回開催最終週の時計より多少速い0.5秒速い馬場と予想する。内外互角。先行差し互角。
【阪神ダート】
■乾いたダートでパワー型の先行馬が有利
今週は月曜日に24ミリ降り、それ以降は降ってない。中間の散水もない。 乾いた、時計がかかる馬場になると予想する。タイム差なし~0.5秒速い程度か。
前開催の東京および京都のダートが渋り気味で全体に時計が速めだったので、東京、京都で不振だった先行馬からピックアップするのがお奨めだ。逃げ・先行有利。内枠有利。パワー型が有利。
【中京芝】
■年間でもっとも芝がよく、やや先行有利
夏のメンテナンス以降初の開催になる。Aコース初日。
とにかく競馬に使うのはこれが初めてなのだから、今の時期に芝が悪かったら大変なことになる。文字通りこれ以上ない絶好の芝であると考えるのが基本。雨は月曜日に17.5ミリ降ったが、それ以降降ってない。1秒くらい速い芝か。
中京は夏の張替えが野芝の最盛期を過ぎてからの張替えになるので、芝の路盤へのくっつきがやや甘い。それと厳寒期の開催が続くため芝が傷みやすい条件が揃っている。そんな中で今開催だけは唯一良好な芝と考えらえる。夏の芝の更新時にシャタリングマシンおよびバーチドレンを入れているはずなので、芝が軟らかく、開幕週だからといって前が止まらない芝にはならないはず。
芝の状態がいいので速い上りは出る一方、芝が軟らかくなったことで道中のスタミナの消耗度が高くなり、同じペースならやや前の馬が垂れやすくなる(レースの上がりが遅くなる)と思う。したがって基本的には先行有利、内有利ながら、開幕週でペースが速くなりやすいと考えられることから、2番手の好位グループの馬のちょい差しがいちばんの狙い目になる。
【中京ダート】
■乾いたダートでパワー型の先行馬が有利
中京は7月の開催が極端に速かった。その後クッション砂の洗浄を行ったとはJRA・GPの「馬場情報」欄に書いてないが、砂は足しているはずで。ある程度また遅くなっているだろう。タイム差なし~0.5秒遅い程度の状態か。
雨は月曜日に17.5ミリ降ったが、それ以降降ってない。砂は乾いている状態。力が要る乾いたダートでやや先行有利だが、長い直線で差し馬の台頭も警戒しておくべき。内外互角。

城崎哲
1959年栃木県生まれ。競馬雑誌編集者を経て、フリーランスのライターに。 『カリスマ装蹄師 西内荘の競馬技術』により2007年JRA賞馬事文化賞受賞。 まるで学者のように調査対象を多角的に突き詰める業界屈指の取材力を持ち、 JRA馬場造園課など独自のコネクションも数多く築いている。 他に『コースの鬼!2nd Editon』、『ハンデキャッパーの方法』など、競馬に関する著作多数。

城崎哲
JOSAKI TETSU
1959年栃木県生まれ。競馬雑誌編集者を経て、フリーランスのライターに。 『カリスマ装蹄師 西内荘の競馬技術』により2007年JRA賞馬事文化賞受賞。 まるで学者のように調査対象を多角的に突き詰め、独自の視点から競馬を追及するのが持ち味で、コース予想の分野を切り開いた。 他に『コースの鬼!2nd Editon』、『ハンデキャッパーの方法』など、競馬に関する著作多数。