ヴィクトリアマイルは、格下馬のためのチャンスレース。GⅠ実績で劣る馬、すなわち、GⅠ級の本質的な底力に欠ける馬にもチャンスがあるということ。
過去、このレースでは圧倒的な実力差を持っているはずの名牝が苦戦しています。
昨年は、後に牡馬相手の大阪杯を勝つラッキーライラックが人気を背負って凡走。一昨年は、後の年度代表馬で、最強クラスが揃った有馬記念をも楽勝したリスグラシューも2着と苦杯を舐めました。
最強牝馬の呼び声高いブエナビスタですら、勝つには勝ちましたが明らかな格下であるヒカルアマランサスとクビ差の辛勝(翌年はアパパネの2着)。
牝馬として64年ぶりにダービーを制したあのウオッカですら、最初の挑戦では2走前まで条件戦を走っていたエイジアンウインズを捕らえ切れず2着に敗れています。
その他、前年のジャパンカップ勝ち馬ショウナンパンドラが3着に敗れたり、宝塚記念勝ち馬スイープトウショウが凡走したり……。
牡馬相手にGⅠを勝てるレベルの馬や、クラシック二冠を獲るくらいの世代最強牝馬が本来の力を発揮できない。それがヴィクトリアマイルというレースなのです。
距離適性がズレている、先に大目標があるため仕上げ切っていないなど、力を発揮できない要因は幾つか考えられます。
しかし、その他の好走馬、好走血統を見ると、そもそもこのレースが「名牝級の馬が持つ底力は邪魔になる」という本質的要素を秘めているのではないかと考えることもできます。
フジキセキとクロフネ。芝、ダート、馬場、距離を問わずコンスタントに活躍するものの、大レースに行くとディープやキンカメといった底力のあるA級血統に及ばない。そんな器用貧乏な側面を持つ2つの血統が複数回好走馬、穴激走馬を送り込んでいることが象徴的。
よくいえば万能型、悪く言えば器用貧乏というフジキセキやクロフネの特性と、先述した名牝レベルの取りこぼしは決して無関係ではありません。
このレース自体が、牡馬相手に勝ち負けするような底力を求めていないということ。
GⅠ実績馬より、これまでGⅠで少し足りない結果に終わっているような馬の方がパフォーマンスを上げやすい。冒頭に述べた通り、ヴィクトリアマイルは、格下馬のためのチャンスレースなのです。
今年でいえば……
②ビーチサンバ
④シゲルピンクダイヤ
⑤プリモシーン
⑭スカーレットカラー
このあたりがイメージに当て嵌まる存在。
⑭スカーレットカラーは、これまでGⅠに2度挑戦し、7、15着とともに凡走。成績だけ見ればGⅠでは一歩足りないように映ります。
しかし、こういったタイプが激走するのがヴィクトリアマイルの特徴。内有利の馬場設定を跳ね除け、道中後方2番手から直線外選択で2着した前走は、着順以上に価値のある内容。今年、番狂わせの主役になるのはこの馬です。
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境和樹
SAKAI KAZUKI
立教大学部法学部卒。東スポや競馬の天才で人気上昇中の血統予想家。血統傾向からレースの適性を探る。