【次走予定も発表】ついに迎えた厩務員デビュー戦!まさかのサプライズと、濃密な一日で見えた課題と可能性

【次走予定も発表】ついに迎えた厩務員デビュー戦!まさかのサプライズと、濃密な一日で見えた課題と可能性

05/01 (金) 厩務員・国枝栄の調教日誌

先月の25日(土)、東京10Rの鎌倉Sでトクシーカイザーが出走し、厩務員として初めて競馬場に行き、レースに担当馬を出走させた。

▲中団からレースを進めると、
直線では脚を伸ばして5着に健闘

いやー、しかしパドックは凄い人だかりだったね。メインレースじゃないのに隙間がないほどたくさん集まっていて、あの感じは昨年8月3日の新潟5R・プロメサアルムンドのときみたいだった。アーモンドアイの2番仔として注目を集めているのは知っていたけど、昼休み直後なのにグルリと人に囲まれていたから驚いた記憶があったんだよね。

でも、そのときのような雰囲気だったよ。フリーパスの日とはいえ、5万7000人も集めたんだろ?(日曜日は3万3000人弱)。ファンを集めた功績の一端があるなら、JRAからマージンをもらいたいくらいだね(笑)。

まぁ、それは冗談としても、レース当日美浦トレセンを馬運車で出るときに最初に驚きがあった。馬運車には数々のGⅠ馬の馬名が車体の横に記載されていて、それらがランダムに厩舎に当てられて輸送するんだけど、馬運車の会社が手を回してくれたみたいで、出発時の車がアパパネと書いてあり、競馬場からの帰りがアーモンドアイだったんだ。粋な計らいしてくれるなぁと思ったよ(笑)。嬉しかったね。

それに、約50年ぶりに乗った馬運車の中もとても快適だった。冷暖房完備でゴロリと横になれるスペースもあり、行きは2時間ほど、帰りも2時間20分ほどで着いたよ。リラックスできたし、道路も空いていたから良かったね。

競馬に向かう馬の変化と
武豊騎手とのゲート裏

色々と準備を済ませ、いざ鎌倉Sのパドックとなったワケだが、周回を重ねていく内に自分の脚に違和感が出てきてね。徐々にカカトに痛みを覚えてきたんだ。恐らく、前後の馬に合わせて周回するので、踏ん張ったり促したりしている内にこすれて、靴ズレしたんだなぁ。

履き慣れている靴を持って行ったし、特別なこともしていないんだけど、周回時間も長く感じたのも確か。最後のほうは自分の歩様がおかしくなって、近しい知人からは「パドックの最後、怪しかったですよ」なんて言われたくらいだから(苦笑)。

鞍上の(武)ユタカを乗せるときは「新人なんでよろしく頼むよ」と笑顔を向けて言っておいた。向こうも笑っていたけど、そのまま地下馬道を通ってゲート裏まで行かせてもらって、発走直前のゲート入りも自らやった。ユタカから「レースでゲートに入れたことあるんですか?」と聞かれたけど「いや、ない。初めてだ」と返したらまた笑ってたけどな(笑)。でも、いい経験ができたよ。

▲笑顔が溢れるパドックの周回

レースが終わったあとは、俺のことどうこうより、トクシーカイザーのことを「ジワジワ伸びてきましたし、頑張って走ってくれましたよ」と言って上がってきたが、5着だったし内容も悪くなかったよね。その後、ユタカは記者たちに俺のことを「将来有望ですね」なんて話したそうだが、その辺りはさすがだなと(笑)。でも、小島茂之調教師も満足していたよ。

それにしても、ずっと1頭に付き添ってみて、馬の変化というか状態の変化というのがよく分かったね。トクシーカイザーは厩務員になって最初から携わっている馬で、とても大人しくて従順な馬だったのは当初から言っているが、馬運車で競馬場に運ぶと明らかにピリピリしていたんだ。

普段より少し発汗もあったし、ボロ(馬糞)が少し緩くなったり、いつもは気にしない作業もイヤイヤしたりして、分かりやすく緊張状態になっていた。凄く暴れたりとかはないんだけど、大人しい馬でもこうなるのかと。

人馬の安全のために
パドック周回への提言

ただ、ここからは提言なんだが、パドックの周回時間はもっと短くてもいいんじゃないかと思う。これは自分が靴ズレしたからというだけではなく(苦笑)、人馬の安全やトラブル回避、競走馬の全能力発揮のためにだよ。

今回、15分ほど曳いたけど、どんどん馬は気が入ってくるから抑え込むのも大変だし、馬も人もどんどん体力を消耗していくから。諸外国のレースのように、2~3周したらサッと馬場に出ていく形はどうなんだろうか。

もちろん、馬券戦略のひとつでパドックを見たいというファンが多いことも知っている。それならば、各馬がそれぞれのレースで2~3周している姿を録画し、次走時や次々走時に全馬公開すればいいだけの話。今はそれをモニター以外にも、スマホやタブレットなどのデバイスで見られるんだし、見たい人は個々でそうすればいい。

それが浸透すれば、例え従来より短い時間でも該当馬のタテの比較はできるだろうし、それを提供できるWi-Fiなどの環境も今のJRAにはあるハズ。

▲熱い視線を集めたパドック

夏の福島や新潟、小倉や中京では既にパドックの周回時間は短くなっているけど、大きく馬券の売り上げが落ちたとかないんだろ?ならば、それを本格的に導入してもいいんじゃないか。既にパドック周回時にミストが使われ始めたが、馬の熱中症対策には周回時間の短縮が一番だと思う。

これらを競馬後に自厩舎以外の周りの助手や厩務員と話していたら、皆んな口を揃えて「JRAにはずっとそれを言っているんですよ。でも、聞き入れてもらえない。国枝さんくらい影響力のある人からドンドン発信してください!」なんて言うんだよ。確かに、働き手の高齢化や人手不足で、今のトレセンの労働状況からみると必要なんじゃないかな。

一緒に行った同僚の厩務員は、午前のレースと午後のレースの2回、担当馬を出走させたんだが、やはり疲れていて帰りの馬運車は爆睡していたからね。当日、競馬場に2頭持っていくパターンもそう珍しくはないんだけど、朝早くにトレセンを出発して暑い中で2回も装鞍やパドック、レース後の作業(馬房に連れて行き馬体を洗ったり)をやって帰るんだから、やはり大変なんだよ。

次戦は立夏Sを予定
そして新たな担当馬も!

今後は俺も、担当馬によっては新潟や福島、関西圏の競馬に行くこともあるかもしれない。そのときの環境なども分かるから、経験を積んでいってどこかで活かしていきたいよね。

…とまぁ、色々と言ったけど、厩務員デビューとして自分が恵まれているのは確かだよ。小島茂之師の計らいで準OP馬を担当し、いきなりの特別戦でユタカが騎乗。それが5着と内容も良く、乗った馬運車はアパパネとアーモンドアイなんだから。

使ったあとのトクシーカイザーも、美浦に戻ったらリラックスして疲れもそうないので、次戦は中1週で5月10日(日)の立夏Sを予定している。優先出走権(準OPは前走3着以内)がなく、特別登録の頭数が多いとハンデ優先で選ばれるか抽選か、になるんだけど、今度は靴ズレの対策もして臨むよ(笑)。

▲トーアエレクトラムに騎乗する
国枝厩務員

もう1頭、今週から新しく担当したのがトーアエレクトラムという3歳牝馬なんだけど、こちらも2回東京で使う予定らしい。同馬の動向ややってみての感触は、また来週に詳しく話そうと思う。

※次回は5月8日(金)更新を予定しています。