【先週は担当馬が2着&3着】各馬の個性が光った週末!目の当たりにしたサラブレッドの奥深さ

06/19 (金) 厩務員・国枝栄の調教日誌

先週の土曜日(13日)、東京10Rの夏至Sでは担当のトクシーカイザーが出走。結果は2着だったが、いや~それにしても惜しかったねぇ。

パドックでは、前回出走したとき(4月26日)より気合が乗っていて、前の馬に突っかけるんじゃないかというくらいグイグイ引っ張っていた。東京競馬場の馬房を出るときからそんな気合乗りで、勢いよくワーッと出ていったからね。

それでも暴れるというほどではなく、扱いに困るワケではなかったが、パドックで周回していると直後に歩いている馬との間が少し開いてしまうくらいの勢いで周回していた。

▲気迫溢れるトクシーカイザーと
笑顔の菊沢騎手&国枝厩務員
普通、ハナ前を抑えながら歩いていると徐々に落ち着いてくるものなのだが、勢いは衰えず前の馬(平岩厩舎・レーウィン)にプレッシャーをかけるみたいな感じで…。いやー、悪いことをしたなと。

でも菊ちゃん(菊沢一樹騎手)には「前走時以上に気持ちが乗っていていい状態だから頼むよ」とか言っておいたんだ。

作戦なしの逃走劇!
レース後にはもう一つの戦いが…

いざ、レースが始まると内からスッと出ていってハナに行ったから、おぉ逃げるのかと。特に作戦を言ったりはしなかったので、ちょっと驚いたけど、直線入り口でもリードがあったし「よしよし」なんて思っていた。

ただ、東京競馬場の直線の長さはよく知っているから、2番手の馬が迫ってきたときに「あ、来るな来るな…」と。

最後に交わされてしまったけど、もう調教師時代に何千とレースを使っているし、ドキドキするとかはそこまでなかった。「まぁ、しょうがないな」くらいだったけど、でもあそこまでいったら勝ちたかったよねぇ。

▲1勝クラス勝利時以来の逃げを打ち、
最後まで見せ場十分の2着に粘った
小島茂之師からは、馬が上がってきたカンカン場(検量室)で「仕上げが甘かったんじゃないの~」と冗談交じりに言われたし(笑)、検量室前のテレビで一緒にレースを見ていた清水英克師からは「1つ勝つのは難しいでしょう(笑)」とか声をかけられてね。

そりゃ、調教師は東西で約200人、担当馬を持っている持ち乗り助手と厩務員は東西で2000人ほどいるんだから、チャンスの数が違うだろなんて話していたんだ(笑)。


そうそう、それで今回は2頭とも3着以内にきたので、レース後に検体といって尿検査をすることになって。それが頭に入っていなかったので、トクシーカイザーのときは少しあたふたしてね。検体採取所に付き添ってそれを見ていたんだが、30分経ってもオシッコが出なくて。

普段、自分で手入れするときは、馬体のあの辺りを触ってこうすれば出るのに、ということは分かっているんだけど、職員にやってもらうと勝手が違うんだろうね。レース後の興奮や緊張もあるだろうし、第三者が介入して手を貸したらダメなので、見ているしかなかった。

すると、以前からトクシーカイザーはレース後に尿が出ないというデータが向こうにあったらしく、1時間ほどして血液を採っていたんだ。こういう馬もいるというのはもちろん聞いたことはあったが、自分でいざ目の当たりにすると違うもんだね。

トゥザファイナルも少し検体に時間はかかったが、無事に終えられたしやはり個体差があるよね。面白いもんだ。

素質を見せつけたデビュー戦
サラブレッドは千差万別

翌日14日(日)の東京4Rでは、もう1頭の担当トゥザファイナルが出走して3着だった。土曜日にトクシーカイザーと一緒に馬運車で競馬場に行って、厩舎周りの運動を土・日とやってから競馬に臨んだけど、トクシーカイザーより大人しいくらいで、とても初めての競馬場という感じじゃなかったね。

元気も良くて、手こずることなく装鞍やパドックまでと行けたし、いい雰囲気だったよ。

▲元国枝厩舎のスタッフと並び、
二人曳きでパドックへ
パドックでは、元ウチの厩舎にいた助手が「手伝いますか?」と言ってくれて、二人曳きをした。小島茂之師への許可ももらっていたみたいだね。実はそのとき、ちょっと右脚がつるような感覚があってね。近くにいた(中舘)エイジに「ちょっと水をくれないか」と言って持ってきてもらったんだ。

飲んだら大丈夫になったし、おかげでちゃんと曳くことが出来たんだが、熱中症になりかけていたのかもしれない。違和感のあったままパドックで曳いて、具合が悪くなったら大変だったし、周りに協力してもらい感謝しているよ。

レースでは中団くらいにつけられたが、4コーナーでも大きく外を回っていたしなかなか手前も替えなかったから、リズムを取るまでが大変だったね。それでも1、2着馬とは際どいところまで差を詰めてきたし、4着以下は大きく離したので、素質のあるところは見せてくれた。

鞍上の(吉田)ユタカは「ちょっと忙しかったですね」と言って上がってきたけど、馬体やレース運びを見ても上積みがありそうだし、次に改めて期待したいね。


▲迫力満点!馬体重548キロ
そのパワーを存分に発揮して3着健闘

ただ、トゥザファイナルのほうは、レースと検体が終わって洗い場につき、手入れをしたあとの馬房で凄いことになって…。馬主さんが様子を見に来てくれるというので待っていたんだけど、馬房内で湯気がたつほどイレ込んでいて、興奮冷めやらぬみたいな状態になっていたんだよ。

普段、そこまでのトゥザファイナルを見たことがなかったし、調教後に少しうるさくなってきたなぁとか思ったことはあったけど、それとは比べ物にならないイレ込みだったからね。

汗もびっしょりだったから、もう一度洗い場で洗って落ち着かせようとしたけど、それを見た馬主が「この馬の母親も自分が持っていましたが、レース後にこうなるのは一緒ですねぇ」なんて落ち着いて言ってて、まったく動じていなくて(笑)。

でも、帰りの馬運車でこうなるとマズいし、暴れないよう予防策を施して乗せて帰ったが、本当にその後は普段通りの様子で大丈夫だったんだよね。

調教師として、過去に手掛けた馬の中にもそういう馬はいて、従業員からそこでの苦労もあるとは聞いてはいたが、物凄いイレ込みをする馬はいるんだなと思ったよ。もちろん、小島茂之師から「そういうところのある血統です」ということは言われていた。

でも、全くそんな素振りを見せていなかったから「ひょっとするとこの馬は違うんじゃないか」とも思っていたんだ。

▲勝ち馬には及ばなかったものの、
後続に8馬身差をつけたトゥザファイナルの初戦
それが、全力で走り切ったあとだし、馬房から早く出たいと思ったのかは分からないが、あんなことになるなんてなぁ。次走のときはどうなのかなとか、また別の馬はどうなのかなという興味も改めて出てきたし、サラブレッドの奥深さを身をもって経験した2日間だったよ。



※次回は6月26日(金)更新を予定しています。


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